
- 羊毛フェルトって本当に滑りにくいの?
- ノーマルフェルトと比べてどう違う?
- すぐダメにならない?コスパは大丈夫?
近年、鮎師の間で注目を集める「羊毛フェルトソール」。ノーマルフェルトより滑りにくいと評判ですが、価格の高さや摩耗の速さがネックとなり、「高い買い物だから失敗したくない…」と導入を迷っている方も多いのではないでしょうか。
私はシマノの羊毛フェルト仕様の「リミテッドプロ FS-500V」を3シーズンにわたり、様々な川、水深、苔の状況で徹底的に履き込んできました。もちろん、従来のノーマルフェルトシューズも並行して使用し、その違いを肌で実感。
この記事では、3シーズン履き込んだ私のリアルな体験に基づき、羊毛フェルトの「本当の滑りにくさ」、「気になる耐久性(摩耗具合)」、そして「値段に見合う価値(コスパ)」をレビューします。合わせてノーマルフェルトとの違い、それぞれのメリット・デメリットを徹底比較。
この記事を読めば、羊毛フェルトのリアルな実力が分かり、鮎用フットウェア選びで後悔しないための確かなヒントが得られます。ぜひ最後まで読んでみてください!
【結論】羊毛フェルトの鮎タビは、滑りにくいという『安全性』を最優先する人の選択肢

私が羊毛フェルトのソールを3年間使ってみて分かったのは、羊毛フェルトは【滑りにくさによって得られる安全性】に価値を置く人向けのソールだということ。
耐久性・コスト・手入れの手間といったデメリットよりも、『とにかく滑りにくいソールが欲しい!』というニーズに特化。使うなら割り切りが必要ですが、滑りにくさを求めるなら有効な選択肢になります。
羊毛フェルトの「滑りにくさ」は最高!しかし見過ごせない弱点もアリ
3シーズン、約25回の釣行(2シーズン約20回使用後に、ソール交換後に約5回)で感じた私の評価は以下の通り。一言で言えば『グリップ力は最高レベル、でもそれ以外は割り切りが必要なソール』です。
- 滑りにくさ:◎(滑りにくい)
- 耐久性:✕(ソールの減り、劣化が早い)
- コスパ:✕(初期投資も維持費も高め)
- メンテナンス性:△(釣行後の洗浄と乾燥は必須!サボるとソールの劣化が加速)
特に苔が腐ってヌルヌルの石の上での安定感は特筆ものですが、正直フェルトの摩耗は想像以上に早く、2年間での釣行20回程度でフェルトがボロボロと崩れ始めます。同時に悪臭が発生するようになり、ソールの限界を感じるようになりました。体重が重い方や、歩行距離が長い方は、さらに消耗が早くなるでしょう。
また、性能維持には釣行後の丁寧な洗浄と乾燥が不可欠。泥や砂が付いたまま放置すると劣化が一気に進むため、このひと手間を惜しまないことが長く使う秘訣です。

羊毛フェルトは高いグリップ性能と引き換えに、耐久性・コスト・メンテナンス性にデメリットがある、尖った性能のソールです。
羊毛フェルトを選ぶべき人・選ぶべきでない人の特徴
高いグリップ力を持ちながらもデメリットが多い羊毛フェルトは、どのような鮎師に最適なのでしょうか?
ここでは、羊毛フェルトを3シーズン使った私の実体験から、羊毛フェルトが合う鮎師と合わない鮎師のタイプについて解説していきます。自身のタイプを照らし合わせて、羊毛フェルトの鮎タビ購入する際の判断材料としていただければ幸いです。
こんな鮎師には最適!羊毛フェルトが最適な3つのタイプ
『川での安全は何物にも代えがたい』。そう考える鮎師にとって、羊毛フェルトは最高の投資となり得ます。
- コストや耐久性よりも「転びたくない」「安全に集中したい」という思いが強い人
- 年齢と共に筋力やバランス感覚に少し不安を感じ始めた人
- フットウェアの手入れ(洗浄・乾燥)を丁寧に行える人
特に、危険を伴う急瀬・荒瀬では、その圧倒的なグリップ力が精神的な余裕を生み、釣りに集中させてくれるでしょう。『もし転んで怪我をしたら…』『大切な竿を折ってしまったら…』その時間的・金銭的損失を考えれば、このソールの価値が見えてくるはずです。
また、高齢の鮎師が転倒リスクを減らし、より長く安全に鮎釣りを楽しむための『保険』としても非常に有効。ノーマルフェルトであればツルッと滑ってしまう状況でも、羊毛フェルトであれば粘り強くグリップしてくれるので転倒を回避できるケースも多いのではないかと感じます。
デリケートなソールですが、釣行後に丁寧に洗浄と乾燥をすれば、ある程度長持ちさせることができます。釣行後に鮎タビを真水で毎回洗って乾燥させる習慣のある方であれば羊毛フェルトソールを最大限活用できるでしょう。
後悔するかも?羊毛フェルトが不向きな3つのタイプ
正直、羊毛フェルトは合わないと思われる鮎師は以下のようなタイプです。
- とにかくコスパ最優先! 1日でも長く使えるタフさを求める人
- 体力・バランス感覚に自信があり、「滑るのも想定内!」と思っている人
- 釣行後の片付けは適当に終わらせたい! 面倒な手入れは苦手という人
年間釣行回数が多く、ソールの消耗が激しい方にとって、羊毛フェルトのコストと耐久性はやはり大きな壁になります。
また、若さや日頃のトレーニングで足腰とバランス感覚に自信のある方なら、ノーマルフェルトでも十分対応できることが多く、価格差に見合うメリットを感じにくいかもしれません。
釣行後のタビの洗浄・乾燥を適当に終わらせたい方にも、残念ながらおすすめできません。釣行後の洗浄と乾燥を怠ると、気温の高い真夏はソールの劣化が進み、悪臭が発生して使うのが困難になってしまいます。
【実釣3年の本音レビュー】羊毛フェルト鮎タビの「真価」と「限界」を徹底解剖!

ここでは、私が3年間使ってきて感じた「羊毛フェルト」のメリット・デメリット・カタログでは語られていない特性などについて忖度なしで解説していきます。
メリット①:「滑りやすい苔でもグリップする!」圧倒的な滑りにくさ

羊毛フェルトの最大のメリットは、あらゆる状況での「滑りにくさ」。
滑る危険性の低い「石に付いている苔の状態が良い時」・「増水で石の苔が無くなった川」でのグリップ力の高さはもちろん、非常に滑りやすい「苔が腐ってヌルヌルの状態」でもグリップ力を発揮してくれるのが最大の特徴と言えます。
羊毛フェルトも滑ることは滑りますが、ノーマルフェルトのように一気にツルッと滑るようなことは少なく、多少グリップしてくれるため、ヒヤリとすることは非常に少ないです。滑りやすく危険な状況でも、ある程度グリップしてくれる性能の高さは、安心して釣りをするために非常に心強いですね。
また、フェルトが柔軟なため、ソールが石に接触する面積が大きいことも滑りにくさの要因ではないかと考察しています。
メリット②:足腰の負担を軽減!長時間の川歩きでも疲れにくいクッション性

滑りにくさの他にもう一つメリットを挙げるなら「クッション性の良さ」。
羊毛フェルトは柔軟でクッション性に優れています。川を歩いていても足に受ける衝撃が少ないので川歩きはノーマルフェルトと比べて楽。摩耗が早いせいか、フェルトを若干厚くしてあることもクッション性の高さに繋がっていると思われます。
滑りにくさと衝撃吸収性の良さを兼ね備えているので、腰や膝にトラブルを抱えている方にとっても有効なフットウェアなのかもしれません。
デメリット①:長く使うのが困難!耐久性に難あり

羊毛フェルトは最大のデメリットは「耐久性の低さ」。
「羊毛フェルトはソールの摩耗が早いから長く使えない」と思っている方がいると思いますが、実際に使ってみるとソールの摩耗の早さより、「ソールの劣化」が長く使うことを困難にしています。
羊毛フェルトソールの劣化は「バクテリア等による羊毛の分解」とも言えます。劣化により現れる現象は以下の2点です。
- フェルト部分がボロボロと欠けてくるようになる
- 強烈な悪臭
私が継続して使用するのを断念し、ソール交換を決断した最大の理由は、「強烈な悪臭」。
フェルトがボロボロと欠けてくるだけなら、もう少し長く使用していたと思いますが、強烈な悪臭には我慢ができませんでした。車での釣行時には2重にした袋に鮎シューズ入れて、臭いが車の中に充満するのを防ぎながらの持ち運び。
ソールの悪臭をなんとかしようと、洗剤で洗ってみたり、塩素系漂白剤に漬け込んでみたりもしましたが、効果は無し。この悪臭には太刀打ち不可能と判断し、ソールの交換を決断したのが使い始めて2シーズン目で、合計20回程度使用していた時でした。
2シーズン、20回程度の使用でソール交換が必要という結果は、私的に「耐久性が低い」という評価となっています。
羊毛は温かく湿った条件下において容易に分解される
羊毛は綺麗で乾燥した状態であれば、簡単には分解されません。しかし、温かく湿った状態が続くと、菌やバクテリアの繁殖に伴って酵素が発生し、羊毛が分解されてしまいます。
そのため、羊毛フェルトは使った後に水道水で洗浄し、ソール面を上にして乾燥させることが、長く使うためには重要です。
しかし、雨が降り、ソールが乾かない状態が長時間続けば、菌やバクテリアが繁殖する「高温多湿」の条件が整い、羊毛フェルトの分解が始まってしまうのが悩ましいところ。
「高温多湿」になりやすい夏の時期は羊毛フェルトにとって、あまりにも不向きなのです。
デメリット②:羊毛フェルトは高コスト!購入もソール交換も高額
羊毛フェルト仕様のタビやシューズはノーマルフェルト仕様のものと比べて高額です。
シューズとタビの価格&ソール張替費用一覧
【羊毛フェルト仕様】
品名 | 品番 | 本体価格 | ソール張替修理工賃 |
---|---|---|---|
リミテッドプロアユシューズ 羊毛フェルト | FS-500V | 34,000円 | 8,800円 |
リミテッドプロアユシューズ 羊毛ピンフェルト | FS-520W | 35,000円 | 9,900円 |
リミテッドプロ 羊毛フェルト(中割) | FT-015U | 28,500円 | 8,800円 |
リミテッドプロ 羊毛ピンフェルト (中割) | FT-520W | 29,500円 | 9,900円 |
【ノーマルフェルト仕様】
品名 | 品番 | 本体価格 | ソール張替修理工賃 |
---|---|---|---|
リミテッドプロ中丸シューズ (3Dカットフェルト) | FA-055S | 26,000円 | 5,500円 |
リミテッドプロ中丸シューズ (3Dカットピンフェルト) | FA-057S | 27,000円 | 6,600円 |
カットフェルトタビ 中割/中丸 | FT-043X /FT-044X | 17,500円 | 7,700円 |
カットピンフェルトタビ 中割 | FT-045X | 18,200円 | 8,800円 |
羊毛フェルトとノーマルフェルトの同等品のシューズまたはタビで価格を比較すると、羊毛フェルト仕様のものが約10,000円高くなります。ソール張替修理工賃は羊毛フェルトが1,100円〜3,300円高く、本体価格ほどの差額はありません。しかし、羊毛フェルトは耐久性が低く、交換頻度が高くなるためコストは高くなるのは避けられないでしょう。
羊毛フェルトのジオロックソールは、手軽に交換できるメリットはあるが非常に高価
シマノ独自のマジックテープでソールを着脱できる「ジオロックソール」にも羊毛フェルトがあります。
ジオロックソールは状況に応じてソールを自分で簡単に交換できる便利なシステム。1つフットウェアでソールを交換して様々な状況に対応できるのと、ソールがダメになった時もすぐにソール交換できるのがメリットです。
しかし、羊毛フェルトのジオロックソールは11,000円〜12,200円と非常に高価格。交換の手軽さは魅力的ですが、耐久性を考えるとなかなか手を出し辛い価格だと感じます。
【ジオロックソール価格】
品名 | 品番 | ソール対応機種 | 本体価格 | |
---|---|---|---|---|
ジオロック カットフェルトキット | KT-641X | A | 3,600円 | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック カットピンフェルトキット | KT-642X | A | 5,250円 | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック 羊毛フェルトキット | KT-660Y | A | 11,200円 | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック 羊毛ピンフェルトキット | KT-661Y | A | 12,200円 | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック カットフェルトソールキット | KT-002V | B | 3,500円 | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック カットピンフェルトソールキット | KT-004V | B | 5,250円 | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック 羊毛フェルトキット | KT-530W | B | 11,000円 | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック 羊毛ピンフェルトキット | KT-531W | B | 12,000円 | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック カットフェルトソールキット | KT-001V | C | 3,500円 | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック カットピンフェルトソールキット | KT-003V | C | 5,250円 | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック 羊毛フェルトキット | KT-532W | C | 11,000円 | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック 羊毛ピンフェルトキット | KT-533W | C | 12,000円 | 楽天市場で詳細を見る |
鮎釣りで使うジオロック対応のタビとシューズは以下の物が候補となりますが、ソール一体型の物と比べて高価なことも悩ましいところです。
品名 | 品番 | ソール対応機種 | 本体価格 | 初期装備のソール | タイトル |
リミテッドプロ ジオロック羊毛フェルト (中丸先ワイド) | FT-522W | B | 37,400円 | 羊毛フェルト | 楽天市場で詳細を見る |
リミテッドプロ ジオロック 羊毛ピンフェルト (中割) | FT-521W | B | 37,400円 | 羊毛ピンフェルト | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック タビ中割 (ソールレス) | FT-041Y | B | 24,100円 | なし | 楽天市場で詳細を見る |
ジオロック タビ中丸先ワイド (ソールレス) | FT-042Y | B | 24,100円 | なし | 楽天市場で詳細を見る |
リミテッドプロ ジオロック 中丸フィットシューズ(3Dカットピンフェルト) | FA-044T | C | 35,500円 | 3Dカット ピンフェルト | 楽天市場で詳細を見る |
リミテッドプロ ウェットシューズ | FS-013W | C | 35,500円 | カットピンフェルト | 楽天市場で詳細を見る |
タビはソールが付いていない「ソールレス仕様」の物もあるので、自分が使いたいフットウェアとソールの組み合わせが無いという場合は、ソールレス仕様のタビと別売りのソールを買うのが最適。シューズタイプはソールを変えることで、渓流、鮎釣り、ロックショアなどに使えるので、色々なジャンルの釣りをしているならシューズタイプがおすすめです。

ジオロックソールはフットウェアによって対応するソールの種類がA、B、Cと3種類に分かれています。ソールを購入する時は間違えないように気をつけましょう。
デメリット③:釣行後の洗浄が必須!綺麗にして乾燥させないと長持ちしない

ノーマルフェルトの鮎シューズや鮎タビを使用している鮎師の方も釣行後は水洗いしていると思いますが、羊毛フェルトソールを使う際場合は、より丁寧な洗浄と早く乾燥させることが長持ちさせるために重要となります。
羊毛フェルトソールは綺麗に洗っていても、湿って暖かい状態だとバクテリア等によって分解が進みます。汚れが付いている場合なら、よりバクテリア等が繁殖しやすい環境となり、羊毛フェルトの分解が加速。羊毛フェルトソールは思った以上に早く劣化してしまいます。
高価な羊毛フェルトソールを少しでも長く使おうと思えば、面倒でも釣行後に綺麗に洗浄し早く乾燥させなければなりません。


外に干しっぱなしより、ソールが完全に乾いたら屋内の湿度の低い場所に保管することをおすすめします。
【徹底比較】羊毛フェルト vs ノーマルフェルト あなたに最適なソールはどっち?

ノーマルフェルトと羊毛フェルトを比べた場合、「何が異なるのか?」
シーズン中にノーマルフェルトと羊毛フェルトを使い比べてみた私の実体験を元に徹底比較していきます。自分に合ったソールがどちらなのかを判断する際の参考にしてみてください。
比較ポイント①:【グリップ力】状況別での滑りにくさの違い
羊毛フェルトとノーマルフェルトは川の状況により、同じようなグリップ力を発揮する時もあれば、グリップ力に差が出る場合があります。状況別でのグリップ力を比較すると以下の表のようになると私は感じました。
苔が付いていない川 | 程よく苔が 付いている川 | 苔が腐って ヌルヌルの川 | |
---|---|---|---|
羊毛フェルト | 滑りにくい | 滑りにくい | まあまあ滑る |
ノーマルフェルト | 滑りにくい | まあまあ滑る | メッチャ滑る |
増水後の苔が付いていないような川では、羊毛フェルトの優位性はあまり感じることはありませんでした。ノーマルフェルトでもしっかりグリップするので、どちらのソールを使っても良い状況と言えます。
程よく苔が付いた川では、ノーマルフェルトは若干注意して川歩きをしないと滑ってしまいます。しかし、羊毛フェルトはあまり滑る感覚がなく、安全に川歩きができる印象です。
川歩きをしていて一番滑る危険性が高い、苔が腐ってヌルヌルの川は羊毛フェルトとノーマルフェルトのグリップ力の違いがよく分かります。ノーマルフェルトは滑り出したら一気にツルッと滑ってしまうのに対して、羊毛フェルトは多少グリップしてくれるので、滑りはしますが即転倒に繋がるような滑り方にはなりにくいです。
羊毛フェルトの性能を過信するのはダメですが、ちょっと油断して滑った時にもリカバリーできる羊毛フェルトのグリップ力は「転倒を防ぐ保険」と言えます。
比較ポイント②:【耐久性と寿命】ソール交換頻度の差は?

使い方にもよりますが、羊毛フェルトの耐久性はノーマルフェルトの1/2〜1/3程度になると私は考えています。
羊毛フェルトとノーマルフェルトを私が実際にソール交換をするまでに使った、おおよその日数は以下の通りです。
- 羊毛フェルト:約20日(2シーズン)
- ノーマルフェルト:約60日(6シーズン)
注:ここでのソールの交換までの日数は、体重約60kgの筆者が使った場合によるものです。個人の体重や使い方によりソール交換までの日数は異なりますので、ご了承願います。
羊毛フェルトは分解が始まり出したら交換タイミングだと思ってよいでしょう。ボロボロ崩れやすくなるのに加え、悪臭が酷く、使い続けるのが困難になってきます。分解が始まるタイミングは使う人や天候条件によってバラツキがありそうですが、かなり長く使っても30日程度で限界のような印象です。
ノーマルフェルトは羊毛フェルトと同じように使っていても、ボロボロ崩れることや悪臭が発生することがないので長く使えます。私が今使っているシューズは約60日使ってフェルト交換をしましたが、ソールがすり減って無くなる限界まで使おうと思えば、あと15日ぐらいは使えそうな印象。ただし、グリップ力はかなり低下しているので、川歩きの安全面を考えるとノーマルフェルトは50日ぐらい使ってソール交換するのが良さそうです。
比較ポイント③:【価格とコスパ】初期費用とソール交換費用の違い

羊毛フェルトとノーマルフェルトを使い続けた場合のコストはどれぐらい違うのか?私が実際にソール交換を行うまでに使った日数を元にコストを計算してみました。
実際に羊毛フェルトは約20日使ってソール交換、ノーマルフェルトは約60日使ってソール交換を実施しましたので、シマノの同等の鮎用シューズで羊毛フェルトを20日使って交換した場合とノーマルフェルトで60日使って交換した場合の1日あたりに掛かるコストを比べています。
品名 | 品番 | 価格(税込) | ソール交換費用(税込) |
---|---|---|---|
リミテッドプロアユシューズ (羊毛フェルト) | FS-500V | 37,400円 | 8,800円 |
リミテッドプロ中丸シューズ (3Dカットフェルト) | FA-055S | 28,600円 | 5,500円 |
羊毛フェルトを20日使ってソール交換した場合のコスト
- 1回目のソール交換までのコストは、37,400円/20日=1,870円/日
- 2回目のソール交換までのコストは、(37,400円+8,800円)/(20日+20日)=1,155円/日
ノーマルフェルトを60日使ってソール交換した場合のコスト
- 1回目のソール交換までのコストは、28,600円/60日=477円/日
- 2回目のソール交換までのコストは、(28,600円+5,500円)/(60日+60日)=284円/日
単純にソールの2回目の交換までにかかる1日あたりのコストは、羊毛フェルトがノーマルフェルトの約4倍かかってしまいます。比較してみると羊毛フェルトがいかに高コストであるかが、よく分かりますね。
比較ポイント④:【メンテナンス性】手入れのしやすさと性能維持のポイント
羊毛フェルトとノーマルフェルトはソールの性能を維持するための管理方法が若干異なります。私の経験とシマノ公式の使用上の注意点を合わせて解説しますので、ソールを長持ちさせたい方は参考にしてみてください。
ソールの洗い方の違い
- 羊毛フェルト:水道水でソールの汚れを綺麗に落とす必要あり
- ノーマルフェルト:ソールはサッと水洗いするだけでOK
洗った後の乾燥方法の違い
- 羊毛フェルト:風通しの良い日陰で、ソール面を上向きにして乾かす
- ノーマルフェルト:日陰で適当に乾かす
羊毛フェルトとノーマルフェルトのどちらも釣行後に洗って乾かすという作業は同じ。しかし、羊毛フェルトは一手間多くなってしまいます。私は大して面倒だとは感じませんが、釣行後の片付けはパパッと済ませたい人にとって羊毛フェルトはストレスを感じるかもしれません。
ソールが乾いた後の対応にも羊毛フェルトとノーマルフェルトは違いがあります。
高い湿度が羊毛の分解を促進するため、羊毛フェルトはソールが乾いたら湿度の低い場所での管理するのがおすすめ。軒下の雨が当たらない場所であっても、雨天で湿度が高い日が続けば羊毛の分解が進んでしまうので、乾いたからといって屋外に干しっぱなしにするのは良くありません。
対して、ノーマルフェルトの管理は適当でOKです。ノーマルフェルトの素材は耐薬品性、耐摩耗性、耐衝撃性、軽量性に優れるポリプロピレン製。紫外線に対しては弱いので洗った後に陰干しするのがおすすめですが、干しっぱなしにしていても、羊毛フェルトのように分解されません。「サッと洗って陰干して放置」という簡単な管理で十分なのがノーマルフェルトの強みです。
シマノのウェブサイトでは羊毛フェルトのアイテムに対しては以下のような注意書きがあります。
ご使用上の注意点
シマノWebサイトより引用
●羊毛フェルトは化学繊維製フェルトにはないグリップ力を発揮いたしますが、摩耗の進行は早くなっています。
●フェルトを水に浸してからご使用ください。乾いた状態でお使いになるとグリップ力低下やフェルトの破損につながります。
釣行前には必ずご自分の目でソールの状態を確認し、異常がある場合はご使用をお控えください。
●使用後は水道水で洗浄し、フェルト部分が上になる状態でしっかりと陰干しさせてください。
使用後、濡れた状態で長時間放置されますと、バクテリア等で羊毛が分解され、機能や外観を損なうことがあります。
●洗剤をご使用になる際は、中性洗剤を使って、スポンジなどできれいに洗い流してください。
漂白剤入りの洗剤は使用しないでください。
羊毛フェルトに様々な注意書きがあるのに対して、ノーマルフェルトは注意書きは一切ありません。ノーマルフェルトはグリップ力では羊毛フェルトに劣りますが、使い方や管理方法を気にしなくてもよいので非常に優れたソール素材です。
羊毛フェルトとノーマルフェルト、どちらを選ぶのが正解か?

私がもし、羊毛フェルトとノーマルフェルトのどちらか1つを選べと言われたなら、「ノーマルフェルト」を選びます。そして大部分の鮎師にノーマルフェルトの方を勧めます。
なぜなら、ノーマルフェルトは、「低コスト」・「長持ち」・「管理が楽」の3つのメリットが大きいからです。ノーマルフェルトは羊毛フェルトに比べ滑りやすいですが、「川歩きは滑る危険性が高いもの」という意識で慎重な行動を心がければ、ほとんどの状況はノーマルフェルトで対応できます。
しかし、全ての鮎師にノーマルフェルトが最適かというと、そうではありません。具体的に、羊毛フェルトが最適な人や場面は以下の3つ場合であると私は考えています。
- 高齢の鮎師
- 急瀬や荒瀬で釣りをする場合
- ドライタイツを使用する場合
①高齢の鮎師に羊毛フェルトが最適な理由
高齢者は転倒した場合に骨折や川に流されてしまうリスクが若い方に比べて高くなってしまいます。羊毛フェルトソールの高いグリップ力は転倒のリスクを軽減し、高齢鮎師が安全に鮎釣りをするのを強力にサポート。
ノーマルフェルトであれば滑って転倒につながるようなケースでも、羊毛フェルトなら一気にツルッと滑るのを抑えて転倒を回避できるため、高齢鮎師にとって羊毛フェルトソールは最も適したソールと言えます。
②急瀬や荒瀬で釣りをする場合に羊毛フェルトが最適な理由
羊毛フェルトの優れたグリップ力は速く強い流れの中でもしっかり踏ん張ることができるため、釣りに集中でき、安全面も優れます。
流れの中に立ち込んだ時にズルズル滑ってしまうようでは狙うべきポイントで的確な竿操作をすることはできず、良い釣果を得ることは困難。しかし、羊毛フェルトの優れたグリップ力でしっかり踏ん張ることができれば竿操作に集中できるので、釣果アップに繋がります。
また、羊毛フェルトのしっかり踏ん張れる性能は川に流されてしまうリスクを軽減。急瀬や荒瀬で大鮎との真っ向勝負を楽しみたいなら羊毛フェルトソールは最適な選択です。
③ドライタイツを使用する場合に羊毛フェルトが最適な理由
完全防水のドライタイツは転倒して流された場合にリスクが高いため、転倒を防ぐためにグリップ力の高い羊毛フェルトソールを使うと安全性が向上します。
ドライタイツは川で転倒してしまうと足部分に溜まっている空気のせいで、流されると足が浮いてしまい立ち上がるのが困難です。さらに足が浮くことにより上半身が水没し、水を飲んでしまったりすればパニック状態になり非常に危険な状態になることも考えられます。
転倒を防ぎ、安全に釣りをするための保険として羊毛フェルトソールは非常に優れた選択肢であると言えます。
【羊毛フェルトの賢い使い方】コストを抑え寿命を延ばす!「常時使用」はしないのが正解
高価な羊毛フェルトの性能を最大限に引き出し、かつ寿命を延ばすための秘訣は、「オールシーズン毎回履かないこと」です。私は「ここぞ!」という必要な場面に限定して使用することで、安全性とコストパフォーマンスの両立を実現しています。
なぜなら、最大のメリットであるグリップ力は、ノーマルフェルトでは心許ない特定の状況でこそ真価を発揮するからです。すべての状況で使う必要はなく、大切なソールを温存することが賢い選択と考えています。
具体的には、私は以下の2つの基準で羊毛フェルトとノーマルフェルトを使い分けています。
判断基準①:「川の状況」で使い分ける
最も重要な判断基準は、川底の苔の状態です。
羊毛フェルトの出番 → 苔が腐り、非常に滑りやすい状況 :苔が腐り、ヌルヌルの絨毯のようになった川底は、羊毛フェルトが最適。転倒のリスクが極めて高いため、迷わず安全性を最優先します。
ノーマルフェルトで十分 → 苔の状態が良く、滑りにくい状況 :良好な苔が付き、グリップが効く状況では、羊毛フェルトの性能はオーバースペック気味です。このような場面ではノーマルフェルトを使い、羊毛フェルトを温存します。
判断基準②:「装備(ウェア)」で使い分ける
転倒した際のリスクの高さも、重要な判断基準です。
羊毛フェルトの出番 → ドライタイツ着用時 :転倒すると、立ち上がることが困難になることがあるドライタイツ着用時は、絶対に転びたくありません。そのため、シーズン初期や後期にドライタイツを履く際は、川の状況にかかわらず羊毛フェルトを使用し、安全マージンを最大にしています。
私の年間使用モデルと比率
羊毛フェルトとノーマルフェルトと羊毛フェルトを必要に応じて使い分けた結果、私のシーズン全体での使用比率は、羊毛フェルトが約3〜4割、ノーマルフェルトが約6〜7割といったバランスに落ち着いています。 「ドライタイツを履くシーズン初期・後期」をメインに、「盛期の特に滑る状況」でスポット的に投入するイメージです。
この「使い分け術」を実践することで、羊毛フェルトの高価な交換コストを効果的に抑制しつつ、最も危険な場面でその絶大なグリップ力の恩恵を受けることができます。ぜひ、あなたの鮎釣りにも取り入れてみてください。

オールシーズン羊毛フェルトで釣りをするのが一番安全ですが、コストとの兼ね合いを考えると使い分けるのがベスト。
まとめ:羊毛フェルトは究極の安全装備。その価値は価格以上にある

この記事では、羊毛フェルトの圧倒的なグリップ力と、その一方で無視できないコストや耐久性、そして賢い使い分けの方法まで、私の3年間の実体験を基に解説してきました。
では、最終的に羊毛フェルトとノーマルフェルトのどちらのソールを選ぶべきなのでしょうか?
もし、コストパフォーマンスを重視し、現在の装備で特に不安を感じていないのであれば、ノーマルフェルトは優れた選択肢であり続けるでしょう。
しかし、以下の一つでも当てはまるなら、羊毛フェルトは価格以上の価値をもたらす「最高のパートナー」になります。
- 過去に川で滑って怖い思いをした、ケガや道具の破損を経験したことがある
- 体力に自信がなく、転倒のリスクを少しでも減らして釣りに集中したい
- 積極的に立ちこむ攻めの釣りをして、今まで届かなかった一匹を手にしたい
「あの時、滑らなければ…」という後悔をしないために、羊毛フェルトは、コスト以上の「安全」と「釣果」をもたらす最高の保険です。
もちろん、交換コストや手入れの手間はかかります。しかし、それを補って余りあるほどの「安全」、そして積極的に動いて攻める釣りができることで「釣果」という大きなリターンが得られるはずです。
「安全を守りつつ、もっと釣りを楽しみたい」──そう願うなら、羊毛フェルトがもたらす異次元のグリップ力を、ぜひ一度体験してください。次の一歩を踏み出すあなたの背中を、確かな足元がしっかり支えてくれるはずです。
